事業承継/M&A

親族や元従業員などに分散した株式を集約し、将来の相続の紛争化も予防した事業承継スキームを構築

2024.05.15

事業承継リスク診断で複数のリスクが判明した会社について、分散した株式の買取りや、自社株の遺留分からの除外合意などを成立させ、相続紛争の防止と円滑な事業承継を両立させた事例

事業承継を円滑に進め、会社を今後も発展させていくためには、早期に準備を開始することが重要です。

経営者の高齢化が進展している日本において、事業承継は個々の企業だけでなく、社会全体で解決すべき国家的な課題といえます。経営者が人生をかけて培ってきた技術やノウハウ、知的財産や従業員・取引先などの経営資源を散逸させずに継承するという点で極めて重要な意義をもつためです。しかし、後継者不足などの理由から、事業承継に向けて計画的な取組みを進められている企業はまだ多くなく、事業承継の準備を行わないことによるリスクが拡大しています。

事業承継を課題とする会社の多くは、株式が多数の人に分散している、名義株主が存在するなどのリスクを抱えています。

事業承継を課題とする会社は設立から相当の年数が経過していることが多く、拒否権付株式(いわゆる黄金株)が発行されていたり、名義株主がいたり、親族や元従業員などに株式が分散していたりするなど多くの事業承継リスクを抱えています。また、業績が好調で自社株の評価が高いため移転の際に税務上の問題が生じたり、現経営者の財産の大部分を自社株が占めている場合には、相続の際に後継者以外の相続人が財産を受け取れず不満をもつ可能性が高いといったリスクもあります。

弁護士による企業診断等で自社に潜む事業承継リスクを把握し、課題解決のための具体的なスキームを検討することが重要です。

本事例では、創業約70年の製造卸会社に当事務所の提供する事業承継リスク診断を受けて頂き、定款や株主構成、財産や家族構成など多角的なリスク分析を行いました。その結果、経営者が70代後半と高齢で軽度認知症の疑いがあり、また、親族や元従業員などに株式が分散され、さらに経営者の財産の大部分を自社株が占めているなど複数のリスクが判明しました。事業承継リスクが大きく緊急度も高かったことから、直ちに事業承継スキームの検討に着手しました。

将来の事業承継で悩む必要がないスキームを構築すれば、経営者は安心して事業に集中することが可能になります。

事業承継スキームの検討には経営者と後継者の想いが最も重要であり、それを時間をかけて伺うことから始めました。本事例では、分散した株式の買取りを進めることと並行して、後継者が会社を継がない相続人から遺留分を請求されて争いになることを防止するため、非後継者である推定相続人2名と協議を重ね、自社株式を遺留分の対象となる財産から除外する合意を成立させるなど、将来の相続紛争を予防しつつ円滑な事業承継への道筋をつけることに成功しました。

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