新製品に関する機密情報を競合他社へ漏洩していた従業員について、事実関係を調査し本人との面談にも対応
2024.05.15
製品開発担当の従業員が、新製品の開発に関する会議資料や実験データなどの機密情報を同業他社に漏洩していたたことが発覚したため、事実関係を調査した上で本人と面談し、退職に至った事例
情報漏洩は近時増加しており、秘密保持義務違反に該当する場合には懲戒処分の対象となります。
秘密保持義務とは、企業秘密を承諾なく使用・開示してはならない労働契約上の義務です。従業員が秘密保持義務に違反して情報漏洩を行った場合の懲戒処分の量定は、故意・過失の有無、企業秘密の重要性、開示の目的、漏洩による会社の損害の有無・程度、企業運営への影響等を総合的に考慮して決定します。故意で、企業にとって重要な情報を漏洩し、背信性が高いと認められる場合には懲戒解雇も可能で、退職金の不支給が認められる場合もあります。
懲戒処分を行うにあたり、対象となる行為を特定するため事実関係の調査を行う必要があります
懲戒処分が有効になるためには、前提として事実関係の調査が不可欠です。調査は証拠を収集して事実認定をすることになります。証拠には事情聴取などから得られる供述証拠とメールの送受信履歴などの物的証拠があり、いずれも重要な証拠です。不十分な調査に基づいて懲戒処分を行ってしまうと、有効性が争われた場合に敗訴リスクがありますので、特に懲戒解雇・諭旨解雇などの重い処分を行う場合は十分な調査を行うことが不可欠です。
企業には調査権限がある反面、従業員にもプラバシー権があるため、慎重に調査を行うことが重要です
企業は、情報漏洩を行ったと疑われる従業員に対して、事実の経過を報告させる顛末書の提出を求めることや、業務に関係する書類や会社の貸与物を使用して送受信された電子メールの提出を要求することができます。一方、業務に関係しない書類や会社の貸与物ではない機材(個人のスマートフォン等)でやりとりされたメール・SNS履歴などは、同意なく提出させることはできません。本事例では、会社貸与のノートパソコンとスマートフォン等の提出を受けて調査を行いました。
本人との協議を顧問弁護士同席のもと実施することで、紛争の火種を残さず迅速に解決できます
本事例では、パソコンやスマートフォン等の調査のほか、上司や他の従業員からの聴き取り調査等も行い、競合他社への複数回にわたる情報漏洩の事実を確認しました。本事例では、故意により新製品開発という重要な機密情報を競合他社に漏洩しており、悪質で会社に与える影響も重大といえ、懲戒解雇も可能と判断しましたが、リスクをできる限り回避したいとの意向を受け、弁護士同席のもとで本人に退職勧奨を行い、損害賠償等を誓約させた上での退職を実現しました。