一般企業法務

カスタマーハラスメント対策の第一歩は、クレーム対応の基本プロセスをマスターすることから

2024.07.24

①聴き取り、②事実の調査・確認、③方針の決定、④回答、⑤外部対応の5つの基本プロセスは、あらゆるクレーム対応に適用できる鉄則で、カスハラ対策の原点

近時、顧客による著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント=カスハラ)を防ぐ法規制の動きが本格化しています。

先般、政府は「骨太の方針」原案にカスタマーハラスメント等について「法的措置も視野に入れ、対策を強化する」と明記し、カスハラ防止策に向けた検討を初めて政府方針に盛り込みました。会社は従業員に対し生命・身体などの安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮をする義務(安全配慮義務)を負っており、カスハラをする顧客が現れた際には、会社は安全配慮義務に基づき、従業員をカスハラから守らなければなりません。

あらゆるクレーム対応に適用でき、クレームの泥沼化を防ぐための鉄則である基本プロセスを身につけることがカスハラ対応の原点です。

厚生労働省は、カスハラを「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業関係が害されるもの」と定義しています(カスタマーハラスメント対策マニュアル)。つまりカスハラは行き過ぎたクレームであり、その対応としては、クレーム対応の基本プロセスを再確認しておくことが出発点と言えます。

基本プロセスは、①聴き取り、②事実の調査・確認、③方針の決定、④回答、⑤(回答で事態が収束しない場合の)外部対応の5つ。

この5段階のクレーム対応基本プロセスに従って対応していけば、どんなクレームも泥沼化するリスクを最小化できるはずです。各プロセスを実践する際の具体的なノウハウは別のコラムでお伝えしたいと思いますが、全プロセスを通じた注意点としては、①常にどの段階にいるのかを意識し、その段階ですべきことを徹底して行うこと、②対応窓口は一本化しつつ、担当者任せにはせずに組織的に対応・判断すること(情報共有の徹底)などです。

最近の特徴として、面談中などに写真や動画を撮影して、動画投稿サイトやSNSに公開するという手段をとる例が増加しています。

写真や動画の撮影や公開だけでなく、コメント欄等に従業員個人に対する誹謗中傷が書き込まれる場合もあります。撮影されていることに気づいた場合、肖像権や施設管理権(企業の施設内での面談の場合)を根拠として撮影を拒絶することが考えられます。また、写真や動画等が公開された後に気づいた場合には、肖像権侵害等を理由として当該サイトに対して削除要請をすることや、その内容が名誉毀損に当たる場合には刑事告訴を行うことも考えられます。

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